かどや製油工場がある瀬戸内海の小豆島。その島で暮らし、島の魅力を写真で伝える
『小豆島カメラ』のメンバーが小豆島とごま油のつながりについて写真と文章でお届けします。
連載第7回は、小豆島カメラの黒島慶子が小豆島にある子どもの一時お預かり施設に伺い、子どもたちの笑顔溢れる理由についてお話を聞きました。
「飲食業をしているので、日曜日に子どもを預けたい」
「短縮授業があるけれど、仕事は定時まである」
「学童に申請したけれど落ちたので預かってほしい」
「病院に行きたい」
「美容院に行きたいので、1時間だけ預かってほしい」
「保育園に入れる年だけど、子どもの発育状況が少し心配」
「小豆島に移住を検討しているので、子どもを預けて仕事先を探したい」
小豆島には、このような、公立の保育園や幼稚園や小学校に預けることがちょっと難しい子どもたちを預かり、保護者を支えてくれる一時お預かり施設「特定非営利活動法人 リトルビーンズ」があります。
対象年齢も生後1ヶ月から小学校6年生までと幅が広く、定員は6〜8人と小規模。土日祝の受け入れも可能で、保育士の都合が合えば夜間のお預かりも対応しています。利用料金も1時間単位で払うことができるので、無駄な費用もかかりません。
遊ぶ時間も、給食の時間も大好き!
リトルビーンズで遊ぶ子どもたち
どこで何をしたいか、子どもたちの要望に柔軟に応えてくれる。なお、奥に見えるのがカウンターキッチン。
実は、私は愛知県と小豆島の二拠点生活をしており、私の住民票は小豆島町にあるけれど、夫と娘の住民票は愛知県にあるため、娘は小豆島の保育園に正規入所することができず、ここ「リトルビーンズ」に通っています。
人数が少ない分とても手厚く、まるで第二の家。
申し訳ないほどに娘の要望に応えてくれ、公立ではありえないほど伸び伸びと過ごしています。
娘はこれまで、リトルビーンズを含む7箇所の保育所系に通ってきたのですが、リトルビーンズが一番のお気に入り。
理由を聞くと、「先生も優しくておもしろいし、いろんなことを受け入れてくれるし、ご飯が美味しい!」と娘。
そう。娘はリトルビーンズの給食が大好き。
娘にとっては「他のどこのご飯よりも好き」らしく、先生からも「よく食べますね!」と言われます。
家ではなかなか食べないし、ちょっとしか食べないのに…。
うーん、リトルビーンズの給食には、どんな魔法がかかっているのか、気になる……。
そこで、お願いをしたら「普通の家庭料理ですよ!」と謙遜なさいながらも、給食を見せてくれることになりました。
ごま油を使った料理は子どもたちにも人気
子どもたちの要望や、一人ひとりの嗜好や発育状況に寄り添って給食を作る九星先生。
給食は、代表の九星ゆい先生が自ら作ります。
「少人数だから、子どもたちが明日の給食を考えてリクエストすることも多いんですよ。そうなれば『いいよ!』ってリクエストに応えますし、その味付けを一人ひとりに合わせて調整することもあります」と言うのだから驚き。
そしてよく使う食材は、施設の庭で子どもたちと一緒に育てて、一緒に収穫する野菜。
「収穫した野菜を手にして『今食べたい』ってリクエストを受けたら、その場で洗って食べさせてあげます。生のまま食べさせることを控える保育園もありますが、私は野菜そのものの味を知ってほしいので」と先生。
庭で、子どもたちと一緒に野菜を育てて、一緒に収穫する
その日、庭で実っていたのはピーマンと茄子。どちらも子どもが苦手としがちだけれど食べるのだろうかと気になりましたが、「どちらも食べますよ! 野菜が苦手な子も、自分で育てて収穫した野菜なら喜んで食べてくれるんですよ。みんながいることがさらに励みになって、頑張って食べてみると『美味しい』って言うんですよ」。
なるほど。この空気感は家ではできないので、苦手を克服するきっかけを作っていただけてありがたいです。
ごま油を使った料理「青椒肉絲(左)」と「豚汁(右)」。
そしてできたこの日の給食は、青椒肉絲と豚汁と炊き込みご飯。青椒肉絲と豚汁にはかどや製油の純正ごま油が使われていました!
「ごま油を使った料理は子どもたちにも人気ですよ! 香りがいい! カウンターキッチンなので、今日も豚肉をごま油で炒めていると香りが子どもたちまで届き、『いい匂い〜! 何作っているの?』ってキッチンに覗きにきて、食欲を沸かしていました」という言葉に、うんうんと頷く子どもたち。
そして先生が、「このかどやのごま油は小豆島で作られているんだよ」って子どもたちに伝えると、「え! そうなの!?」ってすごく嬉しそうにしてくれました。
ピーマンだってパクパク!
室内や外で、全力で遊びきった子どもたちに、「そろそろ給食にしよっか!」と先生。
いよいよ待ちに待った給食の時間です。
「いたーだきます!」という声の後に、食べる子どもたち!
苦手な野菜に躊躇する子どもも、周りの様子を伺って………パクリ! 「おいしい」と得意げな顔をしたので笑っちゃいました。
大根も皮付きのままパクパク!
みんなで野菜を育てて収穫した野菜。食欲と興味を駆り立てるごま油の香り。みんなと全力で遊んでぺこぺこになったお腹。周りの子に感化され、苦手な野菜も美味しく感じるほど楽しく豊かなご飯時間。リトルビーンズには、子どもがより美味しく感じる魔法がたくさん詰まっていました。
黒島 慶子 Keiko Kuroshima
醤油ソムリエール及び醤油官能検査員。Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときから小豆島を拠点に全国の蔵元を訪ね続け、デザイン、撮影、執筆、講座、レシピ作りなどを通じて良い醤油を結び続けている。高橋万太郎と共著の『醤油本』及び
『醤油本改訂版』を出版。
写真・文/黒島 慶子(小豆島カメラ)
自然豊かな土地での生活は子どもも大らかに育つことでしょう。