ホーム
みんなで創る
楽しむ
読む
連載第2回 小豆島の食の豊かさに触れる! ごま油と相性抜群の木桶仕込醤油「ヤマロク醤油」【特別レシピ付き】

連載第2回 小豆島の食の豊かさに触れる! ごま油と相性抜群の木桶仕込醤油「ヤマロク醤油」【特別レシピ付き】

5
小豆島は、海の幸や山の幸のみならず、世界に誇る油や調味料も生み出す、「食」が豊かな島。
かどや製油が生まれた場所で、今なお小豆島に工場があるほか、そうめんや醤油の代表産地。小豆島の食材だけで豊かな食卓を創りだせます。

いろんな食材や生産者を自慢したいなか、今回紹介するのは「木桶仕込醤油」を造る醤油蔵「ヤマロク醤油」。
今世界中から最も注目を集めている醤油蔵です。

今回は「醤油ソムリエール」として「醤油本」などを出版させていただいている、小豆島カメラの黒島が取材させていただきました。

 

木桶仕込醤油の1/3~1/4が小豆島産

 
諸味蔵の小さな窓から差し込む現像的な陽と風
 
そもそも「木桶仕込醤油」とは、人よりも大きな木製の桶「木桶」に仕込んで造る伝統的な醤油。かつては大手を含むどこの蔵も木桶で仕込んでいましたが、戦後に機械化が進み工率を優先するにつれて、日本全生産量の1%にまで減少しました。しかし今、木桶仕込醤油の価値が全国的に見直されて起死回生しています。そして、そんな木桶仕込醤油の1/3〜1/4が小豆島産であり、起死回生の火付け役が、今回紹介する「ヤマロク醤油」。
 
縁側もある和室で醤油を使った軽食を楽しめる。人気メニューは醤油をかけて楽しむアイス。
 
「ヤマロク醤油」が位置するのは、小豆島の南東部「醤の郷(ひしおのさと)」と呼ばれる醤油蔵が集まる地域。入りくむ道の先に、大きな木桶を構えた風情ある蔵が現れ、国内外の人が行き交い、醤油を使った軽食を楽しむ姿も。ヤマロク醤油の見学は、年中いつでもアポなしで可能。正月も台風の日も、面識がなくても、訪ねれば「どうぞ」とすんなり蔵のなかへと案内してくれます。なんと見学者数は、コロナ前で年間約5万人!
 

「ここに乳酸菌や酵母菌が住んでいて、この菌が醤油を造っています」


蔵の奥の大きな扉がガラガラっと開くと木桶がずらり。立ち込める醤油の香り。薄暗い蔵に、小さな窓から差し込む現像的な陽と風。不思議と生命力を感じる土壁や柱や木桶。全く想像しなかった世界に思わず息を呑みます。「ここに乳酸菌や酵母菌が住んでいて、この菌が醤油を造っています」と、蔵人の解説を聞いていると、今まで意識したこともなかった「醤油」の価値観が変わっていきます。
 
醤油を育むヤマロク醤油5代目 山本康夫さん
 
「蔵の山手側から海へと風が流れることで、蔵の表面が適度に乾いて雑菌を防ぐことができるので、窓は常に開けています」と、ヤマロク醤油5代目山本康夫さん。実は、窓を開けているという蔵は全国的に少ないのに対し、小豆島では多い。降水量が少なくて日照時間が長く、比較的乾燥した地域。瀬戸内海で最も高い山「寒霞渓(かんかけい)」から海へと流れる風を活かし、良質な醤油を造っています。

ふと、奥の方に1本だけ比較的新しそうな木桶があることに気づきます。
「初めて自分たちだけで造った桶です」。
そう、ヤマロク醤油は木桶を自作しています。自分たちだけで木桶を造る醤油蔵はヤマロク醤油のみ。
 
諸味蔵のなか。奥にある色が淡い木桶は、山本さんたちだけで初めて造った木桶。

山本さんの木桶への想いが高まったのは、2009年に、絶滅しようとしている木桶仕込を未来に残すため、新桶を9本発注した時に桶屋から言われた言葉。「醤油屋から新桶の発注が来たのは戦後初だ」。

「木桶の寿命は100~150年くらいですが、現在使われている醸造用の木桶はほとんど戦前に造られたもの。約50年後にはほとんどの木桶が使えなくなります。醤油の美味しさには木桶が欠かせない。本物の基礎調味料を100年後も繋ぐため、2011年に『木桶職人復活プロジェクト』を立ち上げました」と山本さん。
 
ヤマロク醤油さんの想いに共感し、桶造りを学びにくる人々。中央が山本さん。

2012年に残り1社となっていた桶屋に島の大工と共に修業に行き、桶造りの技を培いました。さらに小さなパイを奪い合うのではなく、手を取り合って木桶仕込醤油を増やそうと考え、木桶で醤油を造る蔵元や木桶関係者に声をかけて技を伝え、新たな桶職人の育成も開始。今では全国各地に桶職人が生まれ、さらに数十年ぶりに木桶用の杉の植林が再開されるまでになりました。

そんなヤマロク醤油の看板商品が「鶴醤(つるびしお)」。木桶で4年間も醸し、大豆と小麦本来の甘味と旨味を存分に引き出した、驚くほどまろやかで濃厚な醤油。ごま油と相性バッチリで、私もよく合わせて使いますが、山本さんは? 尋ねてみたら、「毎日のようにごま油と鶴醤を合わせて料理するで」。

そこで、ごま油と鶴醤を使った、おすすめレシピを教えてもらいました。
それが名もないこの一品。
山本さんから教えていただいた、ごま油と鶴醤を使ったおすすめレシピ。
 
1)ネギをたっぷり細かく切る。
2)フライパンにごま油を敷き、豚バラを置き、塩胡椒で味付けをしながら焼く。
3)焼いた豚バラを皿に盛り、上にネギをたっぷりと乗せる。
3)2で使ったフライパンに再びごま油を入れて火にかけ、鶴醤を入れたらすぐに火を消し、焼き豚とネギの上にかける。

絶対美味しいやつ! 早速作って美味しさにやられました。
いや、むしろ食べる前から。最後の、フライパンで熱したごま油と鶴醤を焼き豚とネギの上にかけた瞬間の香りに悩殺。
衝動を抑えきれずガツっと頬張ると、期待を裏切らない味わい!

ボリューミーな旨み。良質な素材しか使っていないのに、ジャンクさすら感じるパワー溢れる味わい。そしてネギの清涼感……。疲れが一気に吹っ飛び、まさに至福……。簡単に短時間で作れるので、ぜひ試してみてくださいませ。

 

黒島 慶子 Keiko Kuroshima
醤油ソムリエール及び醤油官能検査員。Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときから小豆島を拠点に全国の蔵元を訪ね続け、デザイン、撮影、執筆、講座、レシピ作りなどを通じて良い醤油を結び続けている。高橋万太郎と共著の『醤油本』及び『醤油本改訂版』を出版。 
写真・文/黒島 慶子(小豆島カメラ)


シェアする
クリップ
投稿の報告
「ごまラボ」内において、利用規約に違反する疑いがある投稿を発見された場合は、こちらより該当する理由を選択の上報告ください。
該当する理由を選択してください。
キャンセル  
投稿の報告
通信に失敗しました。恐れ入りますがしばらくたってからやり直してください。
閉じる
ご協力ありがとうございました
※報告者情報、報告内容については個人情報保護方針にて保護され、公開されることはありません。
注意事項
ご連絡に事務局が個別にお答えすることはありません。
ご連絡いただいた内容は、利用規約に照らし合わせて確認を行います。
ご連絡をいただいても違反が認められない場合には、対応・処理を実施しない場合もあります。
閉じる
ごまラボでは機能実現・改善のためにCookieを使用しています。